チョコレート化学実験。
むしろ気付かれたら困る。





「(あ、雪…。)」





羽菜(はな)は水滴でぼんやりしか見えない窓の外を手でこすって覗きみる。

どうりで曇っていると思った。


音もしないゆらゆら揺れるボタン雪と一緒に、羽菜の決心も揺らぐ。





「雪だな。」



後ろの方から聞こえた低い声に、羽菜は跳ねるように振り向いた。



放課後の理科室は少し寒い。


新田先輩は、もう雪の写る窓から目を離し、同じガラスはガラスでもフラスコの方へ気持ちは移っているようだった。

眼鏡の奥の真剣な眼差しで毎日見られているフラスコや試験管が、正直羨ましい。



「そうですね、雪ですね。」




ホワイトバレンタイン、ですね。




羽菜はキュキュッと窓ガラスに人差し指を滑らせた。



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