チョコレート化学実験。
白衣は化学部のユニフォームと言ってもいい。
そしてそれが似合い過ぎている先輩には、それなりにファンもいる。
目立たないけれど、こっそり。
地味だけれども端正な顔立ちにくらりと来てしまった理系女子は少なくない。
“受け取るぐらい良いでしょう?”
去年。
グラウンド挟んでお隣の高等部の校門で、先輩がなにやら女子生徒と揉めていた。
ピンクの、
リボンだったと思う。
可愛くラッピングされた、中身を見なくても分かるバレンタインのチョコレート。
それを受け取る受け取らないで揉めているらしい。
ブレザーに身を包んだ、美しい人だった。
そして、先輩も当たり前だけど、ブレザーを着ていて。
居合わせたセーラー服の自分と、全く世界が違うように感じた。
“いや、受け取れない。”
“どうして?別にお返し期待してるわけじゃないのよ?いいじゃない貰ってくれるぐらい。”
“すまない。”
“…っ。”
“…。”
“……この、変態化学オタク!もういいわよ!!”
ベシンッ
と、美人の平手打ちをくらい、先輩の眼鏡が飛んだ。
走り去る彼女を目で追って、また視線を戻すと、
“あれ、蓮田か?”
眼鏡を拾っている先輩に気付かれてしまった。