*。:.゚ボクとアナタとチョコレートと゚.:。 ゚【BL】
「シートベルトをして」
横目でナツくんを見ると、びくりと肩を震わせ、唇を噛み締めながら言われるままに俺の言うことを聞いてくれた。
きっと別れを告げられるとか、そういうことを思っているのだろう。
普段話すのが好きなくせに、こういった状況になると言葉足らずなところに嫌気がさす。
苛立ちながら車を走らせ、そうして向かった先は、やっぱり駐車場。
車を止めて、ナツくんの細い腕を取り、そのまま少し歩いた先には小さなこじんまりとしたホテル。
ここは昔から利用している場所で、勝手がわかる分気が楽なんだ。
そのまま手を引っ張り、中へと入ってカウンターの人間に空いている部屋を尋ねた。
幸い空き部屋があるらしく、鍵をもらってそのまま渡された鍵と同じ部屋の番号へ向かう。
パタン。
鍵を開けて入った少し先にはベッドが転がっている。
そのままナツくんを押し、ベッドに沈ませた。
「ど、して……ここにくるの……」
「……ナツくん?」
噛み締めていた唇をやっと解き、そう言った彼の言葉は悲しみに溢れていた。
ああ、やっぱり俺がナツくんを振ると思っているようだ。
「……僕じゃダメだった……。
今まで誰とも付き合ったことがない僕じゃ香弥さんを納得させることも無理だって思ってた……けどっ……こんなの……ひっく……」
頬を伝う涙はとめどなく溢れ、その姿を見るのはとても胸が痛い。
「ナツくん、聞いてあのね……「や、聞かない!! イヤっ!!」」
優しく話そうとするする俺を否定するナツくんの姿が悲しい。
俺の方がナツくんと離れられないのにどうして離れられると思うんだろう。
「ナツくん!!」
強く……強く抱きしめて首を振るナツくんを大人しくさせる。
「っふ……っふぅ……ひっく……」
ナツくんの泣き声がナイフのように俺の胸を突き刺す。
「俺はナツくんが好きだよ? そりゃね。
告白の時も軽いものだったかもしれないけれど、どうかわかって。
君だけなんだ。俺をこんなふうに追いかけさせるの……ナツくんだけなんだ……」
抱きしめて、どうかわかってほしいと説明する俺の今の姿はきっと今までにはない初めての姿だろう。
ナツくんだけに見せる俺の真実――。