*。:.゚ボクとアナタとチョコレートと゚.:。 ゚【BL】
兄さんは腐れ縁だって嘆いているけど、でも本当はまんざらでもないのかもしれない。
だって、兄さんは嫌いな人には嫌いって素直に言っちゃう人だもん。
だから今でも香弥さんは時々家に来て、兄さんと一緒にいるし、その度に僕の面倒も見てくれるんだ。
だからすごく嬉しい。
――でも、これは許されない感情。
だって、香弥さんも僕も男だから……。
でも、だけど……万が一っていうことも!!
訂正……。
やっぱり、そんなことはないよね。
――バカみたい。
わざわざ料理部に入っている女子にチョコレートのつくり方を教えてもらって、家族に勘付かれないよう、夜中にコソコソつくるなんて……。
そうしてカバンの中にチョコレートを入れて持ってくるなんて……。
「今日はどこがわからないのかな?」
ニコニコ、ニコニコ。
いつも笑顔を絶やさない香弥さん。
そんな彼はいつも女性にモテモテだ。
現にほら、窓辺にある香弥さんの机の上には、綺麗に包装されたチョコレートの山がどっさり……。
年頃の男子よりもチビで、黒髪で、黒縁メガネをかけた、これといった特技も何もない、しかも男の僕なんかが渡せる相手でもないのに、バカみたいだ……。
「えっと、今日は数学を教えてほしいです」
六畳くらいある香弥さんの部屋に通されて、ガサゴソとカバンの中を探る。
ずっと下の方に押し込んでいる僕が作ったチョコレートになるべく触れないようにして、小さなテーブルに教科書と参考書を出した。
奥底にあるチョコレートを触らないようにって思ったのは、告白なんてしたら嫌われてしまうと思うから――。
香弥さんへの想いがつのっている今でも悲しいのに、もっとずっと悲しくなる。
自分がとても惨めになるから……。
あー、なんでチョコレートなんてつくったんだろう。
どうして告白なんてしようと思ったんだろう。
どうして……渡したら受け取ってくれるって思ったんだろう……。