*。:.゚ボクとアナタとチョコレートと゚.:。 ゚【BL】
「え?」
困ったのは僕だ。
このチョコレートをいったいどうしろと言うのだろう。
だって、これは香弥さんを想っている人がつくったチョコレートだ。
恋敵のチョコレートを食べれるわけないじゃない!!
……イライラする。
きっと今の僕は眉間に皺が寄っているだろう。
鏡はないけど、自分でもよくわかる。
――でも、こればっかりはどうしようもない。
だって香弥さんから見れば、僕は親友の弟だ。
香弥さんにとって、それ以上でもそれ以下でもない。
もしかしたら、僕が異性だったら望みはあったのかもしれない。
――でも……実際は違う。
だから香弥さんにとって、僕は何でもない存在なんだ……。
自分自身の考えによって打ちひしがれ、そうして悲しみを増幅させる。
顔も心と同じように、クシャってひん曲がっていく。
僕の気持ちを知らない香弥さんは、ニコニコ笑って、とっても嬉しそうだ。
そりゃそうだ。
だって、自分を好いてくれているコがたくさんいるんだもん。
僕が香弥さんの立場だったら、きっとものすごく浮かれていると思う。
ニコニコ、ニコニコ笑う香弥さんは、泣きそうになる僕を差し置いて、明るい声で続きを話す。
「コレ、全部俺がつくったんだ」
――えっ? つくった?
香弥さんの言葉は、とてもとても意外なもので、僕は放心状態になった。
だって、綺麗に包装されて机の上に山積みになっているチョコレート。
てっきり女性からの贈り物だと思っていたんだもん。
パチパチ、パチパチ。
瞬きをして、しばらく香弥さんの顔を見つめていると――……。
「ナツ君に似合うような可愛い柄がなかなか見つからなくってね」
――えっ?
「チョコレート、たくさんつくって包んでみたんだけど……どれがいい?」
――えっ?
「今日はバレンタインデーだものね」
――ええっ?
「好きだよ、ナツ君。俺の彼女になってくれる?」
――えええっ!?
「それでねナツ君? 俺宛の本命チョコレートはどこにあるの?」
――えええええええええっ!?
……香弥さんへの僕の気持ち。
どうやらもうとっくにバレてたみたい……。
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