かぐや皇子は地球で十五歳。
アメリは救急へ電話をかけた後、続けて110番へ電波を繋いだ。何故なら死者が闇へ還った屋内プールに残されたのは重傷の晃だけではなく、煌々と光る満月光の下、プール内に男子生徒の遺体が浮かんでいたから。
桐晃学園中等部3年3組木村賢一。保健室前でバイオリン片手に佇んでいたクラスメイト。
木村賢一は保健室内にてバイオリン弓を使用し晃を刺傷、後の足取りは不明だが屋内プールにて入水自殺を遂げている。警察側の見解では湯浅晃の刺罪を背負い自殺という単純な事件終了で決着付けられているが、実際はそう簡単じゃない。
晃が刺されたのは恐らく私が目を覚ます直前。私に危害が及ばぬ様、保健室から木村くんを押し出し扉を閉めたのだろう。私はその労を無駄に扉を開け、犯人と向き合う状況を演出してしまった。私の足元で踞っていた晃は私を守る為、図書室へ闇移動。晃の話によれば図書室内で死者の出現を察し、自らを囮に屋内プールへと移動したという。だが私はまたもや晃の犠牲を無駄に屋内プールへ向かい、死者との交戦で深傷を負った晃を発見した。幸い、晃の危機を悟り学園中を探し回っていた立川がガラスを割った衝撃音で居場所を感知、屋内プールの扉を解錠。そしてアメリと雅宗さんを交え戦闘へと突入、死者を闇に還し無事今に至る。
晃は出血は酷いものの命に別状はなく、腹部の傷は浅く全治1ヶ月、ゴールデンウィーク明けには退院できる。晃の腹部に刺さったバイオリン弓を深く突き通したのは死者の手であり、木村賢一の刺傷は内臓を傷付けるまでには至らなかったのだ。
死者が闇に還れば、死者が現世に遺し総ての物事を闇が拐っていく。
それが闇と死者の法則。
雅宗さんから聞いた話は何時しか晃が語った非現実な絵空事。だが死者を目の当たりにし自ら剣を錬成したのだ、信じざるを得ない。
闇に眠りし死者は現世の魂を狙い現世へ甦生する。その魂を闇へ還せるのは死者が持つ刀、もしくは忌み子が闇より創りし闇剣のみ。その剣を操り死者を滅することができるのは忌み子の血を受け継ぐ忌み民と呼ばれる少数民族だけ。また剣を創りし忌み子は一世代に男女一名ずつと希少な為、種族に尊まれ護られる。
そう、私こと眞鍋ゆかりは全世界に一人の女の忌み子。雅宗さんに教わった忌み子の能力は私にとってジャンプ見開き20ページ相当の興奮材料となった。
死者?……剣?悪霊退治!?
死神みたいね。あ、ブ○ーチか!
孫悟空か!と晃にツッコんだ瞬間移動は相応の疲労が伴うが知った土地、暗闇、二つの条件が揃えばどこでもドア状態で可能。
さらに言えば15歳の誕生日で武器錬成、武術剣技の修得覚醒がある為、ブ○ーチのように厳しい修行は必要がないらしい。
いやぁ、漫画より楽できちゃうなんて申し訳ない。死者も暗闇も怖いけど、ベタなヒロイン設定に心踊らせてしまう不謹慎な自分が憎い。
現に生徒一人、死んでいる。
生身の人間である、木村賢一。もう一人の忌み子、晃を襲ったが未遂に終わり自殺…もしくは他者に抹殺された可能性も未だ否定はできない。問題は人間が忌み子の命を狙ったという事実。晃の転校を見計らったようなタイミング。私と晃は今後も狙われる危険性があるということだ。
さらに晃が不在の今、死者が出没すれば覚醒前の丸腰な私は危険重度。鍛練された忌み民の監視下に置かれる運びとなった。
私が知る限りの忌み民は三名のみ。
湯浅晃の従者、立川祐輔。
眞鍋ゆかりの従者、柏木雅宗、柏木アメリ。
監視は二年前から行われていたという。
始業式の日、初めて顔を合わせたと思っていた二人は既にこの時、心底嬉し泣きテンションだったらしい。ゾッとしてしまうが割り切るしかない。
「ゆかり、ツレションしよう!そうしよう!」
「俺もいく~っ」
「スタメン諦めたいか、サッカー部部長。」
「そればっかりは許してください……っ。」
それでも坂城くんはトイレ前で堂々と腕を組み籠城している。
二人が頑なに私の傍にいる理由は闇やら死者とは関係ない。私を全校生徒の罵声から守ってくれているのだ。
事件の第一発見者は、私こと眞鍋ゆかり。
木村賢一の殺人未遂動機は警視庁や教育委員会ですら恋愛の縺れ、湯浅晃への嫉妬、怨恨と報告されている。
一人を死に追いやり、一人に傷を負わせたのだ。
正にビッチ。
悪女の称号は確立された。
能天気にノコノコと通学する私は罵られて当然と言える。
だが学園生活を友達と密に過ごせる私には全くヘコタレようがないのであった。
────────ひとつを、除いて。
桐晃学園中等部3年3組木村賢一。保健室前でバイオリン片手に佇んでいたクラスメイト。
木村賢一は保健室内にてバイオリン弓を使用し晃を刺傷、後の足取りは不明だが屋内プールにて入水自殺を遂げている。警察側の見解では湯浅晃の刺罪を背負い自殺という単純な事件終了で決着付けられているが、実際はそう簡単じゃない。
晃が刺されたのは恐らく私が目を覚ます直前。私に危害が及ばぬ様、保健室から木村くんを押し出し扉を閉めたのだろう。私はその労を無駄に扉を開け、犯人と向き合う状況を演出してしまった。私の足元で踞っていた晃は私を守る為、図書室へ闇移動。晃の話によれば図書室内で死者の出現を察し、自らを囮に屋内プールへと移動したという。だが私はまたもや晃の犠牲を無駄に屋内プールへ向かい、死者との交戦で深傷を負った晃を発見した。幸い、晃の危機を悟り学園中を探し回っていた立川がガラスを割った衝撃音で居場所を感知、屋内プールの扉を解錠。そしてアメリと雅宗さんを交え戦闘へと突入、死者を闇に還し無事今に至る。
晃は出血は酷いものの命に別状はなく、腹部の傷は浅く全治1ヶ月、ゴールデンウィーク明けには退院できる。晃の腹部に刺さったバイオリン弓を深く突き通したのは死者の手であり、木村賢一の刺傷は内臓を傷付けるまでには至らなかったのだ。
死者が闇に還れば、死者が現世に遺し総ての物事を闇が拐っていく。
それが闇と死者の法則。
雅宗さんから聞いた話は何時しか晃が語った非現実な絵空事。だが死者を目の当たりにし自ら剣を錬成したのだ、信じざるを得ない。
闇に眠りし死者は現世の魂を狙い現世へ甦生する。その魂を闇へ還せるのは死者が持つ刀、もしくは忌み子が闇より創りし闇剣のみ。その剣を操り死者を滅することができるのは忌み子の血を受け継ぐ忌み民と呼ばれる少数民族だけ。また剣を創りし忌み子は一世代に男女一名ずつと希少な為、種族に尊まれ護られる。
そう、私こと眞鍋ゆかりは全世界に一人の女の忌み子。雅宗さんに教わった忌み子の能力は私にとってジャンプ見開き20ページ相当の興奮材料となった。
死者?……剣?悪霊退治!?
死神みたいね。あ、ブ○ーチか!
孫悟空か!と晃にツッコんだ瞬間移動は相応の疲労が伴うが知った土地、暗闇、二つの条件が揃えばどこでもドア状態で可能。
さらに言えば15歳の誕生日で武器錬成、武術剣技の修得覚醒がある為、ブ○ーチのように厳しい修行は必要がないらしい。
いやぁ、漫画より楽できちゃうなんて申し訳ない。死者も暗闇も怖いけど、ベタなヒロイン設定に心踊らせてしまう不謹慎な自分が憎い。
現に生徒一人、死んでいる。
生身の人間である、木村賢一。もう一人の忌み子、晃を襲ったが未遂に終わり自殺…もしくは他者に抹殺された可能性も未だ否定はできない。問題は人間が忌み子の命を狙ったという事実。晃の転校を見計らったようなタイミング。私と晃は今後も狙われる危険性があるということだ。
さらに晃が不在の今、死者が出没すれば覚醒前の丸腰な私は危険重度。鍛練された忌み民の監視下に置かれる運びとなった。
私が知る限りの忌み民は三名のみ。
湯浅晃の従者、立川祐輔。
眞鍋ゆかりの従者、柏木雅宗、柏木アメリ。
監視は二年前から行われていたという。
始業式の日、初めて顔を合わせたと思っていた二人は既にこの時、心底嬉し泣きテンションだったらしい。ゾッとしてしまうが割り切るしかない。
「ゆかり、ツレションしよう!そうしよう!」
「俺もいく~っ」
「スタメン諦めたいか、サッカー部部長。」
「そればっかりは許してください……っ。」
それでも坂城くんはトイレ前で堂々と腕を組み籠城している。
二人が頑なに私の傍にいる理由は闇やら死者とは関係ない。私を全校生徒の罵声から守ってくれているのだ。
事件の第一発見者は、私こと眞鍋ゆかり。
木村賢一の殺人未遂動機は警視庁や教育委員会ですら恋愛の縺れ、湯浅晃への嫉妬、怨恨と報告されている。
一人を死に追いやり、一人に傷を負わせたのだ。
正にビッチ。
悪女の称号は確立された。
能天気にノコノコと通学する私は罵られて当然と言える。
だが学園生活を友達と密に過ごせる私には全くヘコタレようがないのであった。
────────ひとつを、除いて。