かぐや皇子は地球で十五歳。
第8章 喪失の末。
西陽が木漏れ日始めた保健室の一角。薄目を開け見上げた先にはプリント用紙を握りしめたまま健やかに眠る晃。
(な、なんか……しゅごいこと盗み聞きしちゃったのでは)
月……?使者?
かぐや姫?ウサギさんが餅ついて虐殺される話?
いや、これはフ○ーザ様に星を追われたサ○ヤ人のお話だ。きっとそうだ。
え、てことは立川はナ○パ先生ってこと?ナ○パが生まれ変わって中学教師になったの?
転生て!
前世は宇宙人て!
何、今までの超状現象宇宙で全部片付けちゃえみたいなXファイル的この結末。一番やっちゃいけないよ、信じたくないよー。
いや、逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ。
だって晃とナ○パ先生の顔マジだったもん。いかにも悪者を匂わせる「使者」の生まれ変わりがこの学校に40人もいるんでしょ?
そんな晃も宇宙人。そんな私も宇宙人で────────
────────僕達は前世から結ばれし運命の二人なのだから…!
始業式のあの台詞。
私と晃は恋人同士だったのかな。
でも晃は──────……。
時計は五時限目が終わる時間。今、着替えて行けば六時限目に間に合うだろう。妄想から脱しようと体操着を脱ぎ、ベッドサイドにかけられた制服のシャツを取ると上に被さっていたブレザーが床に滑り落ちた。さっさと着てしまおうと構わず袖に手を通す。
「これは、何だ?」
「え!ぎゃ───────!!」
熟睡していた筈の晃が床に落ちたブレザーを拾い上げたかと思うとこちら側のベッドへ乗り上がり、シャツのボタンが全開の私の両肩をガッチリ掴んだ。
「や、やだ……湯浅くん、離して!」
「ゆかり!これは何なんだ!?」
「え…?」
尋常ではない声色に、冷厳な瞳。乱暴に肩を振られ恐怖で身体が強張った。目の前に突き付けられたのは、一枚のメモ用紙。
「そ、それは……お通夜で木村くんの妹が……」
「木村だと……?どうして今まで隠してた!」
「そ、その時は怖くて読めなくて……制服のポケットに入れたまま…忘れて……」
そうだ、楽しいゴールデンウィークに夢中ですっかり忘れていた。いや、忘れたくて忘れたのかもしれない。
「……あのなぁ、ゆかり。気持ちはわかるが手懸かりになりそうな物があるなら、すぐに俺や雅宗に渡すべきだ。自分の命が危ないってこと、もう少し自覚をもってくれ。」
うんざりと呆れを乗せた大きな溜め息。晃は去り際に拳を叩き付けるようにして、メモ用紙をベッドに沈めていった。
「そん…な……頭ごなしに…怒らなくたって……。」
制服に着替え終わるが、出入口へ足が向かない。ぼんやりチャイムを聞き過ごしてしまい、授業を諦めた私は目の前のメモ用紙を広げることしかできなかった。
ボールペンで丁寧に書かれていたのは短い一文。
──────眞鍋ゆかりは後11人の命を奪う───────
(な、なんか……しゅごいこと盗み聞きしちゃったのでは)
月……?使者?
かぐや姫?ウサギさんが餅ついて虐殺される話?
いや、これはフ○ーザ様に星を追われたサ○ヤ人のお話だ。きっとそうだ。
え、てことは立川はナ○パ先生ってこと?ナ○パが生まれ変わって中学教師になったの?
転生て!
前世は宇宙人て!
何、今までの超状現象宇宙で全部片付けちゃえみたいなXファイル的この結末。一番やっちゃいけないよ、信じたくないよー。
いや、逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ。
だって晃とナ○パ先生の顔マジだったもん。いかにも悪者を匂わせる「使者」の生まれ変わりがこの学校に40人もいるんでしょ?
そんな晃も宇宙人。そんな私も宇宙人で────────
────────僕達は前世から結ばれし運命の二人なのだから…!
始業式のあの台詞。
私と晃は恋人同士だったのかな。
でも晃は──────……。
時計は五時限目が終わる時間。今、着替えて行けば六時限目に間に合うだろう。妄想から脱しようと体操着を脱ぎ、ベッドサイドにかけられた制服のシャツを取ると上に被さっていたブレザーが床に滑り落ちた。さっさと着てしまおうと構わず袖に手を通す。
「これは、何だ?」
「え!ぎゃ───────!!」
熟睡していた筈の晃が床に落ちたブレザーを拾い上げたかと思うとこちら側のベッドへ乗り上がり、シャツのボタンが全開の私の両肩をガッチリ掴んだ。
「や、やだ……湯浅くん、離して!」
「ゆかり!これは何なんだ!?」
「え…?」
尋常ではない声色に、冷厳な瞳。乱暴に肩を振られ恐怖で身体が強張った。目の前に突き付けられたのは、一枚のメモ用紙。
「そ、それは……お通夜で木村くんの妹が……」
「木村だと……?どうして今まで隠してた!」
「そ、その時は怖くて読めなくて……制服のポケットに入れたまま…忘れて……」
そうだ、楽しいゴールデンウィークに夢中ですっかり忘れていた。いや、忘れたくて忘れたのかもしれない。
「……あのなぁ、ゆかり。気持ちはわかるが手懸かりになりそうな物があるなら、すぐに俺や雅宗に渡すべきだ。自分の命が危ないってこと、もう少し自覚をもってくれ。」
うんざりと呆れを乗せた大きな溜め息。晃は去り際に拳を叩き付けるようにして、メモ用紙をベッドに沈めていった。
「そん…な……頭ごなしに…怒らなくたって……。」
制服に着替え終わるが、出入口へ足が向かない。ぼんやりチャイムを聞き過ごしてしまい、授業を諦めた私は目の前のメモ用紙を広げることしかできなかった。
ボールペンで丁寧に書かれていたのは短い一文。
──────眞鍋ゆかりは後11人の命を奪う───────