かぐや皇子は地球で十五歳。
「慶子ちゃん、今日もゆかりちゃんは立川のとこ~?」
「私、知らない!」
「晃~、お前なんかしたぁ?」
「…………した。」
「したんかい!!」

 図書室地下。いつもの昼休み。
 苛立つ栗林に、呑気な坂城。
 ゆかりがボッチ生活に戻り週末を迎えてしまった。狭い学区内だ、ゆかり母の失踪は瞬く間に学園中の噂となっているが、ゆかりが俺達から遠ざかる理由にはならない。俺には一つ屋根の下で暮らし始めてすぐ、手を出して嫌われました的なくだらない言い訳しかできないのだ。

「だとしても、なんで私を避けるの?なんでいつも社会科教室なのよ!」
「ビッチ扱いされて教室で一人飯が食えるかよ。」
「だからって─────」

 友達の証として渡された蘭昌石。その日に死者に襲われたんだ、栗林への疑心は不可避といえる。だがこの1ヶ月警戒し監視はしてきたがこの女は限りなくシロに近い。誕生日も9月生まれ、使者じゃない。カヤナイトは珍しくない鉱石だ、偶然持ち合わせていてもおかしくはない。
 栗林への疑いくらいは解いてやるべきだろう。
 誤解が解け二人に隔たりが無くなれば、栗林はきっとゆかりの心の支えとなる。
 
「明後日詳しく聞いとくよ。」
「へぇえ……?」

 坂城が焼きそばパンを頬張りながらサラリと聞き捨てならない言葉を吐いた。
 あ、明後日?明日土曜日ですよ?明後日は日曜日ですよ?学校お休みですよ? 
 お前の支えは望んでませんから!
 ねぇ、ちょっと!
 坂城く────────ん!

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