満員電車
そんなあたしを見兼ねてか、彼は溜め息まじりに口を開いた。
「ほっぺ。腫れてるよ?」
あたしは思い出して「ああ」と声を出した。
「別に…ちょっと殴られただけです」
あたしの言葉に彼は唖然としたような顔を向けた。
「殴られたって……」
彼が驚いたようにそう言いかけた。
しかし、最後まで言えなかった。
それは、止まっている駅から人が波のように押し寄せて入ってきたからだ。
えっ……!?
「………っ……」
満員電車なんて慣れてなくて、あたしは押しつぶされるように前に進んだ。