CHERISH-チェリッシュ-
「ここ、わかんないね。」
「うーん。ここからどうやって解くのかな?」
遠くで聞こえてくる由羽の澄んだ声。
聞きたくなくても、由羽の声だから耳に入ってくる。
僕は耳を傾けつつ、自習課題の数学に取り組む。
途中、類が話しかけてきても半ば無視。
「ね、下條くんに聞いてみたら??数学得意なんだし。」
僕??
視線をあちらに向けたいけど、僕は無関心を装う。
数学か。
由羽に教えてあげたいな。
「……。でも、龍司…。
教えるのめんどくさい、って言うよ…。」
「そっかー。じゃあ、仕方ない。桐山ー!!あんた、数学できたっけ??」
山川さんの声が教室に響く。
僕は由羽にそんな風に思われていたのか。
しかも、変わりに類って…。
類も確かにできるけど、僕ほどじゃないのに。