世界を濡らす、やまない雨
その日の午前中。
私は珍しく昼休みにさしかかる少し前に仕事にキリがついた。
昼休み開始まで五分ほど時間があまり、届いた社内メールに目を通したりして時間を潰す。
そして昼休み開始時間と同時に立ち上がって、有里の方に向かった。
私が近づいていくと、有里はまだパソコンに向かって作業をしていた。
少し離れたところで有里の手元が落ち着くタイミングを見計らっていると、彼女が手を止め小さく息をついた。
その瞬間を狙って、有里にもう少し近づき声をかける。
「有里。今日のお昼は────」
何食べる?
けれど私が言おうとした言葉の後半部分は、有里が思い切り椅子を引く音で掻き消されてしまった。