世界を濡らす、やまない雨
有里が私をあまり好いていないことは知っている。
以前、化粧室で彼女と同期の女子社員たちが私をよく思っていないという話をしているのを聞いたからだ。
けれど有里は私のいないところでそんなふうに噂するだけで、私を無視したことは一度もなかった。
よほど彼女の気に障ることをしたのだろうけど、どれだけ考えても思いつかない。
昨日の昼休みも、帰り際に挨拶をしたときも有里に変わったところはなかったのだ。
私は有里のことに思いをめぐらせながら、コンビニのお弁当を広げて箸でから揚げを一つ口に運んだ。
口に含んだから揚げは、ひんやりとしていて何だか湿っぽかった。
そういえば、有里のことを考えていてお弁当を温めてもらうのを忘れていた。
私は一人で苦笑いを浮かべると、仕方なくその冷たいお弁当をちょっとずつ片付けていった。