世界を濡らす、やまない雨
でも、そんな私も一度だけ。
私の悪い噂をしている人達に言い返してやりたいと思ったことがある。
中学二年生の体育の時間。
私達はバレーボールの授業を受けていた。
簡単な準備運動を終え、体育教師が適当に生徒達をグループに分ける。
私達は教師の指示に従って、グループごとに纏まった。
「では、これからチーム対抗で試合をします」
教師が私達を見渡しながらそう言ったとき、私の二人前に座っていた女子がその前に座っている女子に向かって不服そうな声で言った。
「げっ、道木さんと同じチームだよ」
少しの配慮もないその声は、私の耳にちゃんと届いた。
「しっ!聞こえるよ」
声を掛けられた女子は、振り返って眉をしかめる。
彼女のその声も、私にははっきりと聞こえていた。
彼女にしてみれば初めに不服そうな声を出した女子を注意したつもりだったのだろう。