世界を濡らす、やまない雨
ほっと安心する私の耳元で、怜が囁く。
「まぁ、俺にはお前の代わりなんていくらでもいるけどな」
怜は口角をきゅっと持ち上げて笑うと、意地悪く笑んだその唇を私の唇に押し付けるように重ね合わせた。
「怜……ごはんの用意の途中……」
「あとにすれば?」
冷たい口調でそう言うと、怜は私を寝室に引きずり込んだ。
「杏香。愛してるよ」
私の身体をベッドに組み敷いた怜が、どこまで本気かわからないその言葉を耳元で囁く。
本気かどうかはわからなくても、私は怜の口からその言葉を聞くとひどく安心する。
怜の腕に身をゆだねた私を、彼はいつもよりも乱暴に抱いた。
怜に抱かれながら、私はやはり彼とは別れられないと思った。
怜のことが好きだから。
そしてそれ以上に、怜に嫌われることが怖いから。