世界を濡らす、やまない雨
定時になるとすぐ、私はパソコンの電源を切って立ち上がった。
時間を気にしながら鞄の中に荷物を詰める。
「おつかれさまです」
私はまだ仕事をしている周りの同僚に小さく頭を下げると、出入り口に向かって歩き出した。
途中、有里の後ろを通り過ぎる。
私が有里の後ろを通り過ぎるとき、彼女はちょうどパソコンの電源を切って帰る準備を始めようとしていた。
数日前のあの日から、私はやっぱり有里に無視されたままで状況は何も改善されていない。
有里に無視されるようになってから、私達は何となくお互いを避けるように行動をしていた。
有里と帰るタイミングが重なってしまうと気まずい。
そう思った私は、帰り支度を始めている有里の後ろを足早に通り過ぎる。