世界を濡らす、やまない雨
それだけではない。
もしあの日、有里が私と課長の姿を目撃していたのだとしたら……
課長に肩を抱かれるようにして駅とは反対方向に歩いていく私達は、どんなふうに見えていただろう。
課長には家族がいる。
変な誤解を受けていないといいけれど。
もしかして有里が私を無視し始めたのは、私と課長のことで何か誤解をして軽蔑したためだろうか。
有里の目を怖々見つめ返しながらそう思った。
有里は、おそらくおどおどとしているであろう私の目をじっと見つめてきた。
そして、確認するように私に尋ねる。
「どこかに行ってたの?」
「まさか。帰り際に課長に少し話しかけられただけ。すぐに別れたよ」
有里の言葉に、私は慌てて首を振った。