世界を濡らす、やまない雨
有里は大きく首を横に振る私をまたじっと見つめたあと、「そう」と小さく呟いた。
「あの、有里。どうしてそんなこと……」
「別に」
有里は突き放すような声でそう言うと、肩にかけていた鞄を抱えなおした。
「じゃぁ、あたしもう行くから」
有里は私に背を向けると、私を置いて歩き始めた。
駅へ向かって消えていく有里の背中。
彼女の履く靴が鳴らすヒールの音。
それがいつまでも耳に響いた。