世界を濡らす、やまない雨
「楽しみにしてくれてたんだ?社交辞令でも嬉しいかも」
私がまた有里に思いを馳せそうになっていると、角谷が笑いながらテーブルに片肘をついた。
それで、私の意識は有里から角谷の方に引き戻される。
「社交辞令なんかじゃないよ」
「そう?それなら余計嬉しいけど」
角谷は優しい目をして私を見つめると、小皿に盛り付けられたままのサラダを指差した。
「それ、ちゃんと食べてね」
「あ、うん」
私は角谷に促されて、食べずにそのままになっていたサラダに箸をつけた。