世界を濡らす、やまない雨
目の前のサラダを黙々と口に運んでいると、そんな私を角谷がじっと見ていることに気がついた。
箸を置いて、顔を上げる。
目が合うと、角谷はほんの少し首を傾げた。
「道木さんも何か話してよ。さっきから俺ばっかり話してる」
「でも、私の話なんてつまらないよ」
小さな声でそう答えて目を伏せる。
「そうかな。つまらないかどうかは、聞いてみないとわからないと思うけど」
「でも、本当につまらないの。仕事だって、単調な事務作業だし。これと言って自慢できる特技があるわけでもないし」
そう答えてしまって、私は何だか自分のことが恥ずかしくなった。
私なんかと二人でごはんを食べて、「つまらない」と感じているのはきっと角谷の方に違いない。