世界を濡らす、やまない雨
申し訳なく思いながら俯いていると、角谷がくすっと声をたてて笑った。
「そういえば道木さん。高校のときもいつも聞き役で、ほとんど自分のこと話してなかったよね」
「そう、かな……」
「そう。ほとんどの女子が、自分のことばっかり主張して人の話には無関心。だけど道木さんはいつも人の話ばっかり聞いて、自分には無関心。何だか、そんなふうだった」
角谷の言葉に、私は視線を上げる。
高校三年生のとき、クラスではちっとも目立たなかったはずの私。
そんな私のことを、角谷がしっかりと記憶してくれていたことに驚いた。
角谷が言う通り、私はいつもクラスメイトの女子達の話の聞き役だった。
彼女達の話を、さも興味あり気に聞いて同調する。
同調するだけで、決して自分の意見を主張したりはしなかった。
下手に自己主張をして、グループの女子達の輪から弾かれるのが怖かった。
輪から弾かれてしまったら、きっともう誰も私を掬い上げてはくれない。
そう思っていた。