世界を濡らす、やまない雨


角谷の話す言葉の意味を図りかねながらも頷くと、彼は私を見て満足そうに笑った。


それから少しして、私は角谷に仕事のことを話してみた。

誰にでもできるような事務処理の仕事の話なのに、角谷は私の話を熱心に聞き、話題が膨らむように時々質問をしてくれた。

角谷が相槌を打ちながら熱心に話を聞いてくれるから、私もつい、もう少し話してみようか……という気持ちになる。


私が角谷に話したのは、自分がしている仕事の内容だけ。

だがそれでも、角谷に話せることは意外にたくさんあった。

一緒に住んでいる怜には、自分が具体的にどういう仕事をしているのか話したことはない。

彼は私が日々会社で何をしているのか全く知らないし、興味も示さない。

だから、自分のことを誰かにこんなに話したのは初めてだった。


< 128 / 237 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop