世界を濡らす、やまない雨
◇
玄関のドアを開けると、ふと違和感を感じた。
自分の家のはずなのに、何だか知らない人の家に迷い込んだような感じ。
その違和感があまりにも大きくて、私は靴を脱ぐ前に何度も玄関の様子を確かめた。
何度も確かめているうちに、ようやく違和感が消える。
そこは見知らぬ人の家などではなく、ちゃんと私の家だった。
私と怜が二人で暮らす家。
それなのに、どうして見知らぬ人の家のような気がしたのだろう。
飲みすぎたのか、角谷と一緒にいた時間の名残がまだ消えないのか。
私は小さく首を傾げると、電気の点っているリビングに向かって声をかけた。
「ただいま」
靴を脱いで廊下に上がると、怜がリビングから出てくる。