世界を濡らす、やまない雨




玄関のドアを開けると、ふと違和感を感じた。


自分の家のはずなのに、何だか知らない人の家に迷い込んだような感じ。

その違和感があまりにも大きくて、私は靴を脱ぐ前に何度も玄関の様子を確かめた。

何度も確かめているうちに、ようやく違和感が消える。


そこは見知らぬ人の家などではなく、ちゃんと私の家だった。

私と怜が二人で暮らす家。


それなのに、どうして見知らぬ人の家のような気がしたのだろう。

飲みすぎたのか、角谷と一緒にいた時間の名残がまだ消えないのか。

私は小さく首を傾げると、電気の点っているリビングに向かって声をかけた。


「ただいま」

靴を脱いで廊下に上がると、怜がリビングから出てくる。


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