世界を濡らす、やまない雨
唇を噛みしめた私と怜の目が合う。
怜はそんな私の顔を見ると、驚いたようにほんの少しだけ瞳を揺らした。
「何だよ、お前。泣いてんの?」
怜の言葉にゆるゆると首を横に振る。
私が静かに首を横に振り続けていると、怜は息を吐き出すようにふっと笑った。
「変なやつだな」
顔を上げると、怜は二年前初めて出会った頃のような優しい笑みを浮かべていた。
優しい表情を浮かべた怜の顔が近づいてきて、彼の柔らかいキスが唇に落ちてくる。
出会った頃好きだった怜の優しい笑顔、初めて交わしたときのような優しいキス。
そんな怜の全てに心を奪われていたはずなのに────……
彼の唇を受け入れながら、私は心の奥でひどい違和感を感じていた。