世界を濡らす、やまない雨
「好きだよ。俺が一番に愛してるのはお前だって、そう言っただろ」
一番に……
その言葉の意味を図る間もなく、怜の唇が体中に落ちてくる。
「…んっ……」
甘い香りを……私でも、怜でもない、他の誰かの香りを強く纏いながら私に触れる怜。
甘い嫌な香りは怜の身体中全てに染み付いていて、私までその香りに侵されてしまいそうだ。
他の誰かの気配を身に纏いながら、それでも怜はまだ足りないのだろうか。
身体だけは怜に応えながら、私の頭はどうしようもなく冴えていた。
怜に身を任せていると、数時間前に角谷と過ごしていたことがまるで嘘みたいに思えた。
怜に触れられるたびに角谷と過ごした時間や記憶がどんどん色褪せていくような気がして……
怜の腕の中、私は悲しい気持ちで天井を見つめ続けた。