世界を濡らす、やまない雨
*雨注*
Ⅰ
ある週明けの月曜日、会社に行くといつもよりいくらか社内がざわついていた。
同僚達の視線が、時折ある場所へ集まるのに気付きそこへ視線を向けてみる。
それは課長のデスクだった。
先週末まで資料や本などで埋め尽くされていた課長のデスクが綺麗に整理され、何もなくなっていた。
不思議に思いながら、自分のデスクへ向かい腰を掛ける。
「道木さん」
鞄を置いて机上のノートパソコンの電源を入れたとき、頭上から声を掛けられた。
振り向くと、すぐ傍に先輩社員の女性が立っている。
私は彼女が傍に立っていることを不思議に思い、ほんの少し眉を寄せた。
彼女は仕事のことで頼みごとをする以外私に話しかけてこない先輩だったからだ。
彼女は手に何も持っておらず、その様子を見ると出勤早々に仕事関係の頼みごとをしにきたようには思えない。
「何ですか?」