世界を濡らす、やまない雨
「道木さん、何してるの?」
すぐ傍で声がして振り返る。
そこには、眉尻を下げ途方にくれた様子の角谷が立っていた。
私に傘を差し出しているせいで、角谷の身体がはみ出してスーツの肩が片方濡れ始めている。
「道木さん、傘は?」
私は角谷の問いかけには答えず、ただ彼の肩が激しい雨でどんどん濡れていくのをじっと見つめていた。
「道木さん!」
角谷が私の肩をつかんで激しく揺さぶる。
私はようやくはっとしたように、角谷の顔を見上げた。
「何かあったの?」
眉尻を下げたまま、心配そうに私を見つめる角谷の目。
その目をしばらく見つめたあと、私はゆっくりと口を開いた。