世界を濡らす、やまない雨
「道木さん。よかったらシャワー浴びて身体温めてきたら?その間、俺は部屋の外に出てるから」
角谷はそう言うと、本当に部屋から出て行こうとした。
耳を赤くして部屋のドアに手を掛けた彼のスーツは右半分がびしょ濡れだった。
「角谷くん」
呼び止めると、角谷がドアに手を掛けたまま振り返る。
「大丈夫。角谷くんも濡れてるでしょ。部屋にいて、スーツを乾かして」
「でも……」
私は角谷の方に歩み寄ると、彼を見上げて微笑んだ。
「ごめんね。関係ないのに、角谷くんを巻き込んだ」
そう言うと、角谷は哀しそうな目をして私を見つめた。
「角谷くんも……ちゃんと乾かしてね」
念を押すように角谷にそう言うと、彼は哀しそうな目をしたまま無言で頷いた。