世界を濡らす、やまない雨


角谷が居心地悪そうに、それでもスーツの上着をハンガーに掛けて部屋の中の椅子に落ち着いたのを確認すると、私はバスルームに入った。


濡れた服を脱いでハンガーに掛けると、浴室に入ってシャワーのレバーを捻った。


その瞬間、シャワーからすごい勢いで冷たい水が飛び出してくる。


温度調整ができていなかったらしく、雨に濡れて冷えた身体にさらに冷たい水を浴びて、凍えそうになった。

身体をぶるっと震わしたあと、よく確認してから今度はちゃんとお湯を出す。

温い湯が、全身を温める。

身体全体を湯で温めたあと、私はレバーを思い切り捻ってシャワーの出る水量を最大にした。

シャワーから勢いよく飛び出す湯が、痛いくらいに身体を打ち付ける。


その水流の強さは、さっき降り注いだ矢のように激しい雨を思い出させた。

それと同時に、有里とそして彼女の顔が浮かんできて……

私は慌てて、シャワーを止めた。


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