世界を濡らす、やまない雨
「はい」
スーツを乾かして角谷に手渡すと、彼は「ありがとう」と小さく頭を下げて私の手からスーツをすばやく受け取った。
「あ、コーヒー淹れようか?」
角谷が乾いたスーツを傍に置くとそう言って立ち上がる。
「あ……ありがとう」
部屋の中にはすぐに湯を沸かせる電気ポットとインスタントのコーヒーが置いてあった。
備え付けの真っ白いマグカップに角谷がインスタントコーヒーを注いでくれる。
「砂糖入れる?」
私が首を横に振ると、角谷は湯気の立ったカップを私に差し出した。
「ありがとう」
カップを受け取り両手で包むように持つと、身体中に熱が伝わってきてシャワーで温まった身体がさらに温かくなる。
角谷は私にカップを渡すと、所在なさ気に辺りを見回してから最初に座っていた椅子に座った。