世界を濡らす、やまない雨
「杏香ちゃん、行こうよ」
クラスメイトが私の制服の袖を引っ張る。
そのタイミングで、私は佳乃から目を逸らした。
佳乃のことなど見えていなかったように、
佳乃の瞳が訴える悲鳴など聞こえなかったように……
視界から佳乃が消える直前、私は彼女の瞳に言いようのないほどの絶望が浮かぶのを見た。
まるで、世界が今すぐに終わってしまうかのような絶望。
あのときの佳乃以上に哀しい目を、私は見たことがない。