世界を濡らす、やまない雨
「佳乃、去年までとは別人だったね」
ちらっと後ろを振り返るようにしながら、クラスメイトが私に話しかける。
でも、私は彼女に何の返答もできなかった。
まだ握り締めたままの手の平では、吹き出してくる汗が止まらない。
心臓も異常なほどにドクドクと激しい脈を打つ。
目を逸らした────……
助けてもらったのに……
私がとっさに守ったのは自分。
ひどい罪悪感が胸を襲い、息をするのも苦しくなる。
けれど、もう振り返ることなんてできなかった。
目を逸らしたのは私。
それ以来、佳乃の姿は一度も見ていない。