世界を濡らす、やまない雨


「佳乃、去年までとは別人だったね」

ちらっと後ろを振り返るようにしながら、クラスメイトが私に話しかける。


でも、私は彼女に何の返答もできなかった。


まだ握り締めたままの手の平では、吹き出してくる汗が止まらない。

心臓も異常なほどにドクドクと激しい脈を打つ。


目を逸らした────……


助けてもらったのに……

私がとっさに守ったのは自分。


ひどい罪悪感が胸を襲い、息をするのも苦しくなる。

けれど、もう振り返ることなんてできなかった。


目を逸らしたのは私。


それ以来、佳乃の姿は一度も見ていない。


< 168 / 237 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop