世界を濡らす、やまない雨




ホテルを出る頃には、雨はだいぶ小降りになっていた。

コンビニでビニール傘を買い、怜と暮らすマンションへと歩く。


断ったけれど、角谷はどうしても心配だからとマンションの近くまでついてきた。


「ここでいいよ。すぐそこだから」

私はマンションのすぐ側にあるコンビニの前で足を止めると角谷に言った。


「でも……マンションの前まで行くよ」

それでも食い下がる角谷に、私はゆるゆると首を振る。


「実は彼氏と一緒に住んでて……見つかるとまずいから」

唇にうっすらと笑みを浮かべる。

角谷はしばらくの間私を見つめたあと、「そっか」と呟くように言ってから頷いた。


「じゃぁ、気をつけて」

「うん。角谷くんも」

角谷の挿すビニール傘が交差点を曲がって駅の方に消えていくのを見つめながら、何だかとても名残惜しい淋しい気持ちになった。


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