世界を濡らす、やまない雨


角谷の姿が完全に見えなくなってから、私もマンションの方へと歩き出す。


玄関のドアを開けると、まだ十一時を回っていないのに家の中が暗かった。


玄関に靴があるから、怜は帰ってきているようだ。

疲れて眠ってしまったのだろうか。


「ただいま」

遠慮がちに声をかけると、床が小さく軋む音がして寝室の扉が開いた。

スーツのまま、怜が寝室から顔を出す。

帰ってきてそのまま眠ったのか、髪の毛が少し乱れていた。


「ただいま」

もう一度怜に声をかけ、部屋にあがる。

そのままリビングに向かおうとする私を怜は寝室のドアの前に立ったままじっと見つめてきた。


< 170 / 237 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop