世界を濡らす、やまない雨


何とか堪えようと寝室の外に這い出て廊下の空気を吸い込んだとき、怜が私の名前を呼んだ。


涙目で振り返ると、怜が低い声を響かせた。


「杏香、出てけ」

怜が私を見る目は、驚く程に冷たかった。


目に溜まった涙が一滴こぼれ、頬をつたい廊下に小さな染みを作る。


「出てけ」

怜がもう一度低い声を響かせる。


あぁ、

私は怜に捨てられるんだ────……


瞬間的に悟った。

嫌われたくなくて、何とか必死にしがみついてきたのに。

こんなにもあっけなく……


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