世界を濡らす、やまない雨
そう思うと、私はまた強い眩暈と吐き気に襲われた。
私は廊下に置かれた鞄を引っ掻き回すと、スマホと財布を取り出した。
そのまま何とか靴を履いて、よろよろとしながら玄関を出る。
エレベーターで何とかエントランスまで降りてマンションの外に出ると、細い雨がぽつぽつと降っていた。
傘を持っていなかったが、部屋に引き返すこともできない。
雨の降る屋外に足を踏み出すと、ふらふらとあてもなく歩いた。
どこまで歩き続けてもスマホに怜からの連絡はなくて、私は彼に完全に見放されたのだと思った。
怜が私達が暮らすマンションで他の誰かを抱いていたという事実よりも、彼に見放されたということのほうが辛くて胸を苦しくさせる。
でも同時に、私は怜に見放されたって仕方ないのだとも思った。