世界を濡らす、やまない雨

Ⅱ

私がそのことを知ったのは、春だったと思う。

春といっても暖かくなり少しずつ夏へと向かっていく爽やかな時期ではなく、寒い冬がようやく終わりを告げる時期。


暖かい日もあれば寒い日もあり、気温の変化に毎日左右される。

そんなとき。


空は一日中灰色に曇っていて、多分強い風が吹いてた。


大学一回生から二回生に年度が切り替わる、その合間にある高校のときよりもずっと長めの春休み。


図書館で借りた文庫本を読み終わって暇を持て余していたとき、母が部屋のドアをノックした。


「杏香、ちょっといい？」

だらりとしていた姿勢を正して座りなおすと、母が神妙な顔付きで部屋の中に入ってきた。