世界を濡らす、やまない雨
佳乃が、どうして────……?
母はそのあとも興奮気味に何か話して、私の部屋から出て行った。
母が出て行ったあと、私はしばらく呆然として動けなかった。
一週間前に、亡くなったんだって────……
母の言葉が、何度も頭の中で木霊する。
震える手で机の引き出しの中を探ると、保管していた年賀状の束が出てきた。
数年間分溜めているその束の中から、中学二年生のときのものを引っ張り出す。
佳乃の名前は、その中から簡単に見つかった。
その年の干支のイラストの下に、佳乃の手書きのメッセージがある。
『杏香ちゃん、また同じクラスになれるといいね。
今年もよろしくお願いします』
佳乃の書いた字は、綺麗で全然癖がなくて、中学生らしさに欠ける。