世界を濡らす、やまない雨


佳乃が、どうして────……?


母はそのあとも興奮気味に何か話して、私の部屋から出て行った。


母が出て行ったあと、私はしばらく呆然として動けなかった。



一週間前に、亡くなったんだって────……


母の言葉が、何度も頭の中で木霊する。


震える手で机の引き出しの中を探ると、保管していた年賀状の束が出てきた。

数年間分溜めているその束の中から、中学二年生のときのものを引っ張り出す。


佳乃の名前は、その中から簡単に見つかった。


その年の干支のイラストの下に、佳乃の手書きのメッセージがある。



『杏香ちゃん、また同じクラスになれるといいね。

 今年もよろしくお願いします』


佳乃の書いた字は、綺麗で全然癖がなくて、中学生らしさに欠ける。



< 197 / 237 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop