世界を濡らす、やまない雨
その綺麗な字から伝わってくる佳乃のイメージは、初めて私に話しかけてくれた彼女そのままだ。
優しくて、自分の意見をきちんと言えて、誰に対しても公正で……
いつだって、背を伸ばして凛としていた佳乃。
このハガキを見る限り、母がさっき言ったことが事実だとはとても思えない。
でも……
それと同時に私の中にあるもう一つの佳乃の記憶が甦る。
階段の踊り場で、背中を丸めて怯えるように震えていた彼女。
助けを求めるように、私を真っ直ぐに見つめてきた彼女の眼差し。
あの日見た彼女の姿が、余計なことを想像させて私を動揺させる。