世界を濡らす、やまない雨
ただ、さっきみたいに先生に気を遣われることなく誰かを捕まえたいと思っただけ。その思いだけで、彼女を追いかけて思いきり走った。
「タッチ」
必死に走ってなんとか彼女に追いつくと、背中に手をつけて、にこっと笑いかける。
すると彼女は振り返って、驚くほど怖い顔で私を睨みつけてきた。
「もう! またユカが鬼!?」
彼女はヒステリックにそう言うと、不機嫌な声で十数えて、脇目も振らず私だけを狙って追いかけてきた。
もの凄い速さで駆けてきた彼女に、私は一瞬にして捕まる。
「タッチ」
彼女は低い声でそう言うと、私を睨んだ。
「どうしてユカのこと狙うの?やめてよ、杏香のくせに!!」
杏香のくせに────!!
遊びに誘ってくれた彼女は、侮蔑のこもった目で私を見てそう言った。
杏香のくせにって、何────?
私は鬼ごっこで誰かを捕まえたらいけないの────?
小さな体が凍りついた。