世界を濡らす、やまない雨
*雨泣*
Ⅰ
視界の端で、車のライトが光る。
バタン、と勢いよく車のドアを閉める音がして、地面を激しく打つ雨の音が一瞬だけ途切れる。
泥水を踏むグチャグチャという音が近づいてきて、私はベンチに仰向けに寝そべっていた身体をゆっくりと起こした。
雨で見通しの悪い視界の向こう、ビニール傘が揺れている。
「道木さん!」
ビニール傘を持ち上げて私を呼んだのは、角谷だった。
「よかった、見つかって。道木さんの近所の公園探し回って、ここにいなかったらどうしようかって────」
角谷はベンチに座って放心したように見上げる私に、ビニール傘を差し出した。
傘にあたる雨が、頭上でパタパタと煩く音を立てる。
私はビニール傘から透ける暗い空を見上げたあと、角谷を見て薄く笑った。