世界を濡らす、やまない雨
「ごめんなさい────」
掠れた声でそう言うと、角谷が苦しそうな表情で唇を噛んだ。
「何で……?」
「関係ないのに迷惑かけて。でも、ほかに誰も────」
思いつかなくて……
角谷の手から、ビニール傘が離れる。
目で追いかけると、それはふわりと飛ばされて、裏返しになって地面に落ちた。
地面の上で雨を受けている傘に気を取られていると、突然身体が温かく包まれる。
気付くと私の身体は角谷の腕に抱きしめられていた。
濡れた私の服が、角谷に張り付く。
「角谷くん、濡れちゃう……」
遠慮がちに角谷の胸を手の平で押し返したけれど、彼は私を抱く腕を解かなかった。