世界を濡らす、やまない雨
「角谷くん、本当に────」
「ちょっと黙れよ!」
角谷が強い口調で私の言葉を遮る。
「ごめん、なさい」
声を荒げる角谷を見るのは初めてで、身を縮めながら細い声で謝る。
すると角谷は片手で私の後頭部を押さえつけるようにして、さらに強い力で私を抱きしめた。
「謝らないで。俺はそんな言葉を聞くために来たんじゃない」
「ごめ────……」
無意識に口をついて出たその言葉を言わせないように、角谷が私の顔を彼の胸へと無理やり押し付ける。
トクトク、と雨の音を打ち消しそうなほどに大きな角谷の鼓動が聞こえる。
私はその音を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。