世界を濡らす、やまない雨
「聞いてもいいのかな、何があったか」
私を見つめながら、角谷が遠慮がちに尋ねる。
私はカップを両手で握り締めて俯くと、しばらく考えてから口を開いた。
「ある人にね、嫌われてしまったの。ずっとしがみついてきたけど、きっともうダメだと思う」
「道木さん……」
「私が自分を守るために人を見捨てたりしたから、だからバチがあたったんだと思う」
顔を上げてほんの少し口角を引き上げると、角谷が片眉を寄せながら私を見ていた。
何を言っているのだろう、と。
そんなふうな表情で。
角谷のその表情を見て、私は僅かに絶望する。
だから、その絶望を誤魔化すようにふっと軽い調子で笑った。
「でも、もう大丈夫。私、人から嫌われることには慣れてるから」