世界を濡らす、やまない雨


私はソファから立ち上がると、カップの中のコーヒーを急いで飲み干した。


「これ、ありがとう。夜中に迷惑かけてごめんなさい。私、帰る────」

カップをテーブルに置いて玄関の方に向かおうとしたとき、角谷が私の手首をつかんでひきとめた。


「帰るって、どこに?」

角谷の真っ直ぐな目に見つめられ、私は返す言葉を失う。


口を閉ざしていると、角谷が小さくため息をついた。


「帰る場所がないから、だから俺を呼んだんでしょ?また、雨に濡れて彷徨うつもり?」


角谷は私をもう一度ソファに座らせると、向き合って真っ直ぐに私を見つめた。


「どうして、いつもそうやって自分の気持ちを誤魔化すの?人から嫌われることに慣れてるやつなんて、いるわけないだろ。だから、傷ついて一人で彷徨ってたんでしょ?」


角谷の真っ直ぐな目を見返せなくて視線を逸らすと、彼が私の両肩を持って揺すった。


「前も言ってたけど、人を見捨てたって何のこと?俺のこと、少しでも頼りにしてくれたなら話してよ」


視線を逸らしたまま唇を噛んでいる私に、角谷が言った。

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