世界を濡らす、やまない雨


目を閉じると、高校三年生のとき私の傍を自転車で駆け抜けていった角谷の背中が甦る。


私の憂鬱を取り払うように吹き抜けていった一陣の風。


角谷はもう一度、私の傍を吹き抜けてくれるだろうか。


私は決意を固めると、ゆっくりと瞼を開けた。


目の前には、真剣な眼差しをした角谷がいる。


私は口を開くと、佳乃のことを有里のことを、そして怜のことを少しずつ話し始めた。


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