世界を濡らす、やまない雨
Ⅱ
雨の音を聞きながら、ようやくうつら、うつらとしかけた頃、枕元でスマホが鳴った。
驚いて飛び上がると、私は相手も確かめずに急いで通話ボタンを押した。
ソファーのほうに視線をやると、角谷はそこに寝そべったままでいる。
角谷を起こさなくてよかった。
私は手の平で口元を覆うと、小さな声で電話の相手に話しかけた。
「もしもし」
「杏香、お前今どこだ?」
電話口の向こうから聞こえてきたのは、怜の声だった。
「れ、い?」
「今どこだって聞いてるんだけど」
怜の低い声が耳に響く。
その声を聞くと、緊張で身体が強張った。
「あ、の……」