世界を濡らす、やまない雨
答えられずに口ごもると、怜が皮肉っぽく鼻で笑った。
「もしかして、男の家?いいご身分だな、杏香のくせに」
杏香のくせに────……
怜のその言葉に、身体中がかっと熱くなる。
「けど、怜だって────」
「俺に口答えする気?」
思わず口から飛び出しかけた言葉を、怜が高圧的な口調で遮る。
「どこにいるのか知らないけど、今すぐ帰って来いよ」
「え……」
怜が私の機嫌をとるかのように、急に優しい声を出す。
「いつも言ってるだろ?俺が一番に愛してるのは杏香だって」
一番に……
思い出すのは、怜が私を抱きながら本気かどうかわからない口調で言っていた「愛してる」の言葉。
私が一番だとしたら、
じゃぁさっき怜が寝室で抱いていた柑橘系の香りの彼女は何番目────?