世界を濡らす、やまない雨
「あんたには、道木さんを愛してるなんていう資格はねぇよ」
角谷のその声は、私が今まで一度も聞いたことがないくらい低くて冷たかった。
「は?誰だよ、お前────」
角谷がスマホから耳を話すと、苛立ったような怜の声が電話口から漏れてくる。
角谷は手に握り締めた私のスマホを冷たい目で見つめると、怜の言葉を無視して通話を切った。
そして、手にしたスマホをベッドの枕元に放り投げる。
角谷は珍しく怖い顔をして私を見つめると、低い声で怒ったように言った。
「道木さん、本当にあいつが好きなの?別れなよ、あんな男。ムリにしがみつく必要ない」
「私は……」
本当に怜が好き────?
出会った頃は、確かに好きだった。
怜の顔も声も仕草も、全部。
でも、今はもう、どうなのかわからない。