世界を濡らす、やまない雨




幼い頃の記憶に心を支配されていた私は、ベッドの中で冷や汗を掻いて小刻みに震えていた。

それに気付いた怜が、私の額に手をのせる。


「杏香。大丈夫か?」

怜の声は、とても優しかった。そのことにほっとする。

怜は震える私の身体を抱きしめると、背中をゆっくりと撫でてくれた。

怜の温もりに安堵して、震えが止まる。それでも、窓を打つ雨音だけはずっと耳に響いている。

横たわる怜の背後にある窓は、カーテンが少し空いていた。

カーテンの隙間から覗く窓に、雨の滴が張り付いているのがうっすらと見える。

それを見ないように、目を閉じる。

けれどもう、眠れる自信はなかった。



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