世界を濡らす、やまない雨
「とりあえずランチ行かない?一度休憩入れた方が頭もすっきりするよ」
有里の言葉に周りを見渡すと、デスクに座っていた社員達はぱらぱらと立ち上がり始めていた。
腕時計に視線を落とすと、既に昼休みが始まって数分が過ぎている。
「そうだね」
私がデスクの上のノートパソコンを閉じると、有里が待ってましたとばかりに破顔した。
「どこがいい?あたしはねぇ、今日はパスタの気分」
デスクの上の書類を片付けている私の傍で、有里が店の候補をいくつかあげていく。
私はそれを笑って聞くだけで、「ここにしよう」と決定打を出すことはない。
「有里が食べたいところでいいよ」
私がそう言うから、最終的には有里が店を決める。
有里もそれがわかっているのに、毎日私にどこに行きたいか聞いてくる。
それはもう、マニュアルみたいなものなのだ。